出走馬情報
秋華賞の過去10年における単勝式の最高払戻金は2008年ブラックエンブレム(11番人気)の2990円だが、4桁配当はこの馬のみ。残る9年は1・2番人気の馬が優勝してすべて500円以下の払戻金で、上位人気の支持を受けた馬の活躍が目立つ。昨年は、桜花賞・オークスを制したジェンティルドンナが秋華賞トライアルのローズSを快勝し、牝馬三冠達成に大きな注目が集まった。しかし、今年は春の実績馬の多くが順調さを欠いており、一筋縄ではいかないムードが漂っている。秋華賞トライアルのローズSは、オークス馬メイショウマンボが4着、オークス2着馬エバーブロッサムが14着に敗退。桜花賞の優勝馬アユサンは脚部不安で休養に入り、2着馬レッドオーヴァルは秋華賞に登録すらしてこなかった。舞台となる京都・内回りの芝2000mは展開の影響を受けやすいコースだが、今年はその展開自体も読みにくいメンバー構成。久々に頭を悩ませる牝馬三冠の最終戦となりそうだ。

その中でも、現時点で頭ひとつ抜けた存在という評価を受けているのが、オークス3着馬で秋華賞トライアルのローズSを制しているデニムアンドルビー(牝3・角居勝彦)。スタートで行き脚がつかず、3コーナー過ぎから強引にまくっていった姿は、同じ内田博幸騎手が騎乗しているゴールドシップを思い起こさせるもの。オークス時から14キロ増えていた馬体重(446キロ)にひと夏を越した成長が感じられたが、ここまでパワーアップしているとは想像できなかった。直線の長い阪神の外回りコースから直線の短い京都の内回りコースに替わり、同じ形の競馬が通用するかどうかが鍵となる。3歳2月の遅いデビューで、使い詰めのままフローラSを制してオークスに挑戦した春シーズンと比べて、臨戦過程ははるかに余裕が感じられる。一気に世代の頂点に立ってもおかしくないだろう。

前走の1000万下・夕月特別(阪神・芝1800m)を勝ったばかりで、まだ1600万下クラスの格下的存在だが、秋華賞ウィークになって一気にクローズアップされると思われるのが、ディープインパクト産駒のスマートレイアー(牝3・大久保龍志)。夕月特別の勝ち時計1分44秒8は、コースレコードに0秒3差と迫る優秀なもの。通算4戦3勝で、敗れたのは前々走の1000万下・三面川特別(新潟・芝1800m、4着)だけだが、約3か月の休み明けに加えて、昇級初戦で古馬とは初対戦と、厳しい条件がそろっていた。秋華賞で最多タイの3勝を挙げている名手・武豊騎手がデビュー以来ずっと手綱を取り続けているのは大きな魅力だ。末脚がしっかりしているタイプであるうえに、2番手追走からゴール前できっちりと抜け出したデビュー2戦目の500万下(東京・芝1800m、1着)のように、流れに沿った競馬もできる自在性を兼ね備えている。器用さが求められる京都・内回りの芝2000mでは大きな武器となりそうだ。

オークス馬のメイショウマンボ(牝3・飯田明弘)は、約4か月の休み明けで臨んだローズSで0秒1差の4着。勝ち馬のデニムアンドルビーに伸び負けする形にはなったが、復帰初戦としては及第点の内容と言えるだろう。前々走のオークスから8キロ増の馬体重(486キロ)はプラス材料。京都・芝コースは〔2・1・0・0〕の好成績で、内回りコースは昨秋のメイクデビュー京都(芝1400m)を快勝した実績がある。ひと叩きした今回は、上位争いに加わってくるはずだ。

シャトーブランシュ(牝3・清水出美)は、トライアルのローズSで9番人気の低評価を覆して0秒1差の2着に食い込み、秋華賞の優先出走権を獲得した。芝1600mのメイクデビュー阪神で8着に敗れたあと、ダートのレースを3戦消化し、再び芝のレースに戻ってからは3戦ともすべて道悪競馬(稍重~不良)で、結果は〔1・2・0・0〕。渋った馬場に適性があるのは間違いないが、調教でずいぶんと動けるようになってきており、ここにきての成長力は見逃せない。今夏の小倉開催では、500万下クラスとはいえ、足立山特別2着、鳥栖特別1着と、芝2000mの距離で古馬を相手に好成績をマーク。良馬場でも軽視は禁物だろう。

ローズSで10番人気ながら3着に好走し、秋華賞の優先出走権を獲得したウリウリ(牝3・藤原英昭)。この馬もプラス8キロの馬体重(452キロ)が示すように、2か月半の休養の効果で春よりも馬体が充実していた一頭。重馬場も上手にこなしてはいたが、本質は軽い芝の瞬発力勝負が向くディープインパクト産駒。直線が平坦で軽い芝の京都コースに替わるのは大歓迎だろう。

ローズSで14着に大敗と、まるで見せ場がなかったのが、エバーブロッサム(牝3・堀宣行)。春シーズンは、フラワーC2着→フローラS2着→オークス2着と勝ちきれないものの堅実な印象が強かっただけに、前走の敗因は道悪馬場(重)に求めてもいいだろう。休み明けをひと叩きした上積みに加えて、今回で関西遠征も2度目と慣れも見込めるはず。ここは、巻き返しの期待が懸かる。

GI・7勝の名馬ディープインパクトを半兄に持つ良血のトーセンソレイユ(牝3・池江泰寿)は、レース前の陣営のコメントどおり、前走のローズSは大幅な馬体重の増加(+32キロ)で出走。小柄な牝馬ゆえに、もちろん馬体が大きくなるのは良いことだが、どの馬よりも瞬発力勝負を求めている馬。雨で渋った馬場状態(重)の影響をまともに受けてしまった印象で11着に大敗した。メイクデビュー京都(芝1800m)を勝ち上がった直後のオープン特別・エルフィンS(京都・芝1600m)では、上がり3ハロン33秒5(推定)の末脚を繰り出して優勝している。この馬も良馬場なら巻き返しが可能だろう。

中山・芝2000mを舞台に行われた秋華賞トライアルの紫苑Sで、逃げ切り勝ちを決めたセキショウ(牝3・杉浦宏昭)。今回も逃げの手で展開を作る可能性のある馬だ。通算成績は〔3・2・2・5〕で、ハナを切ったレースでは2戦2勝。また、先行~中団からの競馬でも1勝2着2回3着2回と、自在性も兼備している。直線に急坂のある中山・芝2000mで2勝を挙げており、直線が平坦な京都の内回り・芝2000mはゴール前の粘りが増す可能性が高いだけに、侮れない存在だ。

同じく紫苑Sで2着に入って秋華賞の優先出走権をゲットしたのは、リボントリコロール(牝3・菊沢隆徳)。未勝利(福島・芝2000m)→500万下の出雲崎特別(新潟・芝2200m)を連勝してきた上がり馬で、紫苑Sは逃げたセキショウ(1着)こそ捕まえられなかったが、後方追走から徐々にポジションを上げ、出走馬中最速となる上がり3ハロン34秒9(推定)の末脚を発揮。馬群を割って鋭く追い込んできたレース内容は見どころ十分だった。芝のレースではまだ底を見せておらず、過去5戦中3戦でメンバー中最速の上がり3ハロンタイム(推定)をマークしている。混戦になれば突き抜けるシーンがあっても驚けない。

ティアーモ(牝3・藤岡健一)は、今年3月のメイクデビュー阪神→500万下の君子蘭賞(ともに阪神・芝1800m)と、逃げ切りでデビュー2連勝を飾った逸材。その後に約2か月の休養を挟んで挑んだオークスでは、好位を追走したものの、勝ち馬のメイショウマンボから1秒2差の6着に敗退した。しかし、わずかキャリア2戦の身で初めての重賞挑戦がGI の大舞台、さらに関東圏への長距離輸送も初めてと、厳しい条件がそろっただけに、度外視できるだろう。オークスのあとは放牧でリフレッシュされ、約3か月の休養明けで臨んだ前走の1000万下・西海賞(小倉・芝1800m)では古馬を相手に好位追走から直線で鮮やかに抜け出し、2着馬を1馬身半突き放す快勝劇を演じた。この中間は栗東坂路でじっくりと乗り込みを消化。休み明けをひと叩きされて、中5週のローテーションで2度目のGI に挑戦する今回は、上位に食い込むチャンスもあるだろう。
JRAより