出走馬情報

天皇賞は、JRAの数あるGI の中でも最も伝統と格式のあるビッグレース。1年に2回、春と秋に行われており、今秋で通算148回目を迎える。かつては春秋ともに芝3200mの長距離戦だったが、1984年のグレード制導入と同時に、秋は芝2000mに距離を短縮。現在は、芝・中距離路線の現役最強馬決定戦という位置付けになっている。凱旋門賞に挑戦したオルフェーヴル(2着)、キズナ(4着)というビッグネーム2頭こそ不在ながら、今年も現役を代表する豪華な顔ぶれがエントリー。東京・芝2000mを舞台に覇を競う。

出走馬で最も多くのタイトルを保持しているのは、紅一点のジェンティルドンナ(牝4・石坂正)。3歳時の昨年は、桜花賞・オークス・秋華賞の“牝馬三冠”を達成し、続くジャパンカップもオルフェーヴル(2着)に競り勝って優勝。GI 4勝を含む7戦6勝という素晴らしい戦績をマークして、JRA賞年度代表馬&最優秀3歳牝馬に選出された。4歳を迎えた今年は海外遠征で世界の強豪に挑戦、約4か月ぶりの実戦となった国際G1・ドバイシーマクラシック(メイダン・芝2410m)ではセントニコラスアビー(1着)に2馬身1/4離されたものの、きっちりと2着を確保。ジャパンカップ優勝馬の実力を証明した。帰国後、約3か月の間隔をあけて臨んだ宝塚記念で3着に敗れ、秋に予定していた凱旋門賞遠征を見送り、放牧でリフレッシュ。今回は約4か月の休み明けになるが、意欲的に調教を積まれており、仕上がりは良好。5つ目のGI タイトルを狙う。

牡馬の実績ナンバー1は、2010年のダービー馬エイシンフラッシュ(牡6・藤原英昭)だ。昨年の天皇賞(秋)も制しており、GI タイトルは2つ。それ以外にも、2010年の皐月賞3着、2011年の天皇賞(春)2着、宝塚記念3着、有馬記念2着と、GI での好走歴が多数。さらに、今年4月の香港遠征では、国際G1・クイーンエリザベス2世C(シャティン・芝2000m)で3着に食い込んだ実績を持つ。前走の毎日王冠は、香港遠征以来約5か月半ぶりの実戦だったが、持ち前の強烈な末脚で鮮やかに差し切り勝ち。同じ毎日王冠での9着敗退から一変して天皇賞(秋)を優勝した昨年よりも、臨戦過程は断然上と言えよう。この中間も順調に調整が進められており、連覇の期待が高まる。

4歳を迎えた今年、急激に力をつけて一線級の仲間入りを果たしたのがトウケイヘイロー(牡4・清水久詞)。3月のダービー卿チャレンジTで重賞初制覇を達成。続く京王杯スプリングCは8着に敗れたものの、その後に距離を延ばして大ブレークした。鳴尾記念で初経験の芝2000mを克服して優勝。続いて、同距離の函館記念と札幌記念を連勝し、『サマー2000シリーズ』のチャンピオンに輝いた。その後はひと息入れて夏の疲れを取り、10月に入ってから追い切りを再開。この天皇賞(秋)に向けて、予定どおりの調整が進められている。今年最大の上がり馬と言える“魅惑の新星”。今回は2011年朝日杯フューチュリティS(4着)以来のGI 挑戦で相手関係は格段に強化されるが、不安よりも楽しみのほうが断然大きい。

トーセンラー(牡5・藤原英昭)は、ディープインパクトの初年度産駒で、これまでに2011年きさらぎ賞、2013年京都記念と重賞を2勝。GI でも、2011年菊花賞3着、今年の天皇賞(春)2着と好勝負を演じた実績があり、十分にビッグタイトルを狙える能力の持ち主だ。今回の舞台となる芝2000mの距離では未勝利ながら、2012年の七夕賞と小倉記念で連続2着に入っており、適性を不安視する必要はないだろう。宝塚記念(5着)以来約3か月半ぶりの実戦となった前走の京都大賞典は、ゴール前でひと息伸び脚を欠いて0秒3差の3着に敗退。今回はひと叩きされた効果で順当に良化している印象があるだけに、優勝争いに加わってくる期待は大きい。

ダノンバラード(牡5・池江泰寿)も、トーセンラーと同じくディープインパクトの初年度産駒。2010年のラジオNIKKEI杯2歳Sで、父の産駒として初の重賞制覇を飾った。その後は、今回と同じ東京・芝2000mで行われた2011年の皐月賞3着を筆頭に善戦するものの勝ちきれないレースが続いたが、今年1月のアメリカジョッキークラブCで2つ目の重賞タイトルを獲得。前々走の宝塚記念では、ゴールドシップ(1着)に0秒6差の完敗だったものの、昨年のJRA賞年度代表馬ジェンティルドンナ(3着)にクビ差先着し、GI で初めて連対を果たした。約3か月の休み明けで臨んだ前走の産経賞オールカマーでは、直線で早めに先頭に立って押し切りを狙ったが、ヴェルデグリーン(1着)とメイショウナルト(2着)に外から交わされて、クビ+クビ差の3着に惜敗。休養明け2戦目で上積みが見込める今回、期待は大きい。

ヴェルデグリーン(牡5・相沢郁)は、3~4歳時こそ下級条件で低迷していたが、5歳を迎えた今年、一気に本格化を果たした。500万下(中山・芝2000m)→1000万下の調布特別(東京・芝1800m)→1600万下の常総S(中山・芝2000m)と、破竹の3連勝でオープンクラス入り。昇級初戦の新潟大賞典は10着に大敗したものの、約4か月半の休養を挟んで出走した前走の産経賞オールカマーを鮮やかに差し切り、重賞初制覇を飾った。もともと、メイクデビュー中山(芝2000m)1着→500万下の若竹賞(中山・芝1800m)2着と、早い段階から素質の片鱗を見せていた厩舎の期待馬。軌道に乗った今なら、GI でも軽視は禁物だろう。

トーセンジョーダン(牡7・池江泰寿)は、2011年の天皇賞(秋)優勝馬で、勝ちタイムの1分56秒1は芝2000mのJRAレコード。GI タイトルはこのひとつのみだが、2010年のアルゼンチン共和国杯、2011年のアメリカジョッキークラブC、札幌記念と、GII を3勝。このほかにも、2011年のジャパンカップで優勝馬ブエナビスタとクビ差2着の接戦を演じ、昨年の天皇賞(春)でも2着に好走している。現役馬の中でも実績はトップクラスの存在だ。2012年のジャパンC(6着)以来、約9か月ぶりの実戦となった前走の札幌記念は13着に大敗したが、スタート直後に重馬場に脚を取られてつまずき、後方からの競馬になったのが大きく響いた印象で、度外視できる。立て直しを図られて仕切り直しの一戦となる今回、好調時の走りをどこまで取り戻せるか、注目したい。

オーシャンブルー(牡5・池江泰寿)は、昨年12月の金鯱賞で6番人気ながら重賞初制覇を達成。続く有馬記念では10番人気と人気順はさらに下がったものの、中団から最後の直線で内を突いて鋭く脚を伸ばし、優勝馬ゴールドシップから0秒2差の2着に好走。金鯱賞を優勝した実力が本物だったことを実証した。5歳を迎えた今年は、日経賞9着、産経賞オールカマー7着と好結果を出せなかったが、それぞれ3か月、6か月の休養明けが敗因と言える。中4週と順調な臨戦過程に加えて、金鯱賞で適性の高さを証明している左回りの芝2000mが舞台となる今回は、その底力を見直す必要がある。

ヒットザターゲット(牡5・加藤敬二)は、天皇賞(秋)の前哨戦という位置付けにある京都大賞典を、中団のやや後方から鮮やかに差し切り勝ち。約3か月半の休み明けで11番人気と低評価だったが、断然人気に支持されていたゴールドシップ(5着)を破る大金星を挙げた。先行勢が止まる流れでうまく展開がはまった印象もあるが、優勝タイム2分22秒9は、1993年にメジロマックイーンがマークしたレースレコード2分22秒7に0秒2差と迫る優秀なもの。昨年の新潟大賞典Vで左回り・芝2000mの適性を実証しているだけに、GI でもレース展開が向くようなら、上位進出のチャンスもあるだろう。

メイショウナルト(せん5・武田博)は、去勢されたことで心身ともに急成長を遂げ、ここ5戦で3勝2着2回と好成績をマークしている上がり馬。せん馬となって2戦目の500万下(京都・芝2200m)で3勝目を挙げると、1000万下の三田特別(阪神・芝2200m)も連勝。続く1600万下の関ケ原S(中京・芝2000m)は2着に惜敗したものの、格上挑戦した前々走のGIII・小倉記念を1分57秒1のコースレコードで制し、重賞ウイナーの仲間入りを果たした。好メンバーがそろった前走のGII・産経賞オールカマーでも2着に好走し、勢いはまったく止まっていない印象。初のGI 挑戦でさらなる相手強化となる今回も、侮れない存在だ。

ダークシャドウ(牡6・堀宣行)は、4歳時の2011年にエプソムCと毎日王冠を連勝し、天皇賞(秋)でも2着に好走。GI 勝ちこそないものの、今回の出走メンバー中3位となるレーティング(121)が示すとおり、地力の高さは折り紙付きだ。6歳を迎えた今年は、産経大阪杯5着→安田記念6着→毎日王冠5着と善戦止まりのレースが続いているが、いずれも優勝馬とのタイム差は0秒5以内と僅か。能力に陰りが出ていると考えるのは早計で、狙い目も十分あるだろう。

ジャスタウェイ(牡4・須貝尚介)は、エプソムC→関屋記念→毎日王冠と、重賞で3戦連続2着を確保。勝ちきれないものの、すべて出走メンバー中最速の上がり3ハロンタイム(推定)をマークして際どく差を詰めている。末脚の破壊力は、GI のメンバーに入ってもまったく引けを取らない。3歳時の昨年は、毎日王冠2着をステップに天皇賞(秋)に挑み、優勝馬エイシンフラッシュから0秒5差の6着。キャリアを積み重ねて完成度は確実に高まっているだけに、昨年以上の成績も期待できるだろう。


JRA
http://www.jra.go.jp/