本番に直結する注目の菊花賞トライアル!「第62回 神戸新聞杯(菊花賞トライアル)」
2005年以降の菊花賞優勝馬9頭中、同年の神戸新聞杯に出走していなかったのは2009年のスリーロールスだけ、残る8頭はいずれもこの神戸新聞杯で3着以内に好走し、本番の優先出走権を獲得していた。特に、2011年以降は3年連続で神戸新聞杯の優勝馬がそのまま次走の菊花賞も制しており、前哨戦としての重要度は以前にも増して高まってきた印象だ。今回は阪神・芝2000mで行われていた2005年以前と、中京・芝2000mで行われた2006年を含む過去10年のレース結果から、好走馬に共通するポイントを導き出してみたい。

出走馬情報
2011年オルフェーヴル、2012年ゴールドシップ、そして2013年のエピファネイアと、ここ3年連続で神戸新聞杯の勝ち馬が菊花賞を制覇。菊花賞の最も重要なトライアルレースとしての地位を確立しているのが、この神戸新聞杯だ。関東圏で開催されるもうひとつの菊花賞トライアル・セントライト記念は、例年、中山・芝2200mが舞台となるが、今年は同競馬場のスタンド等整備工事に伴い、新潟競馬場の内回り・芝2200mで先週行われ、日本ダービーの2~6着馬がそろって出走した。一方、今週の神戸新聞杯には、ダービー馬を含む重賞ウイナーが3頭、重賞2着馬が2頭と、春の実績馬が多数エントリー。これらの既成勢力に挑むのが、夏場の休養を挟んだ馬も含めて、春から秋にかけて2連勝をマークした新興勢力。ダービー馬を筆頭に実績馬が秋の始動戦でどんなレースを見せるのか興味深いが、このレースの3着以内馬に付与される菊花賞の優先出走権獲得を狙ってくる上がり馬たちにも注目が必要だろう。

前走の日本ダービーを制して3歳世代の頂点に立ったワンアンドオンリー(牡3・橋口弘次郎)が登場するとあれば、真っ先にこの馬の話題から進めていかなければならないだろう。ダービー制覇後は放牧でリフレッシュを図られ、秋の始動戦となる神戸新聞杯での復帰に合わせて、8月21日に栗東トレーニング・センターへ帰厩。春はハーツクライ産駒にありがちな線の細さを感じたが、ひと夏を越して馬体は全体的に幅が出た印象だ。父自身や父の代表産駒であるジャスタウェイが古馬になって本格化を果たしたように、本馬もこれから腰回りやトモの筋肉がさらに発達してくるはずで、世代を代表する馬から現役を代表するトップホースへと成長する可能性は高いだろう。10日の2週前追い切り、17日の1週前追い切りはともに坂路で4ハロン52秒台をマークと、しっかり乗り込んで復帰初戦を迎える。直線が長い阪神および京都の芝・外回りコースと東京・芝コースでは合計〔2・2・0・1〕と好成績を挙げてきた馬だけに、休み明けでもGI ホースの貫録を見せてくれるはずだ。

新興勢力の代表格は、サトノアラジン(牡3・池江泰寿)。昨夏のメイクデビュー新潟(芝1600m)を3馬身1/2差で圧勝した勝ちっぷりの良さを評価され、2戦目の東京スポーツ杯2歳S(5着)では、新潟2歳S2着馬イスラボニータ(1着)を抑えて1番人気の支持を受けた馬。今回のメンバーの中でも、潜在能力の高さは引けを取らないだろう。前々走の500万下・茶臼山高原特別(中京・芝2000m)、前走の1000万下・九州スポーツ杯(小倉・芝2000m)を快勝したあとは、短期放牧に出された。9月9日に栗東トレーニング・センターへ帰厩してきたが、18日にCWコースで行われた1週前追い切りでは併せ馬で好調教を披露。今週の産経賞オールカマーに出走予定のサトノノブレス(古馬オープン)を軽く仕掛けた程度で突き放した動きが強烈だった。トライアルのここで好結果を出せるようなら、本番の菊花賞は主役候補の一頭として臨む可能性までありそうだ。

ヴォルシェーブ(牡3・友道康夫)は、今年2月に500万下のセントポーリア賞(東京・芝2000m)で2着馬クラリティシチー(のちにスプリングS3着、ラジオNIKKEI賞2着)、3着馬ショウナンラグーン(のちに青葉賞優勝)を退けて2勝目をマークしたが、その後に軽度の脚部不安が見られたため、春のクラシックを断念。6月22日に行われた前走の1000万下・芦ノ湖特別(東京・芝2400m)を制して、菊花賞トライアルへの出走が見込める収得賞金に到達したことで、夏場は放牧に出されてじっくりと英気を養った。8月下旬に栗東トレーニング・センターへ帰厩したあとは、この神戸新聞杯での復帰を目標に調整されてきた。17日の1週前追い切りは、今回の手綱を取る岩田康誠騎手が騎乗して、CWコースで7ハロンの長めから追われて、6ハロン82秒7をマーク。迫力十分の動きで、休養前よりもはるかにたくましくなった印象を受けた。この状態なら、約3か月の休み明けでも差のない競馬ができるはず。春のクラシック参戦がかなわなかったこの馬にとって、ダービー馬も参戦する菊花賞トライアル・神戸新聞杯は、試金石の一戦になりそうだ。

皐月賞11着(同着)、日本ダービー16着と、春のクラシックは不本意な結果となったトーセンスターダム(牡3・池江泰寿)だが、これが実力ではないだろう。昨秋にメイクデビュー京都(芝1800m)→オープン特別の京都2歳S(京都・芝2000m)を連勝したあと、2か月半の休み明けで臨んだきさらぎ賞も制して、デビュー3連勝で重賞初制覇を成し遂げた逸材だ。前走の日本ダービーは、直線で先頭に立って残り300m付近で急に内ラチに激突、このアクシデントがなければ…と惜しまれるレース内容だった。今回は約4か月の休み明けとなるが、2週前の10日に行われた調教再審査に合格したあと、17日の1週前追い切りは栗東CWコースで併走馬に大きく先着。休み明けでもまずまずの仕上がりを見せている。スムーズな競馬ができれば、一気の変わり身を見せてもおかしくないはずだ。

ハギノハイブリッド(牡3・松田国英)は、今春に500万下の新緑賞(東京・芝2300m)→前々走の京都新聞杯を連勝した勢いに乗って日本ダービーに挑戦したが、勝ち馬のワンアンドオンリーから1秒3も離された13着と大敗を喫した。今回は約4か月ぶりの実戦になるが、馬体重が450キロ前後と牡馬にしてはややコンパクトな馬体の持ち主。17日の1週前追い切りは栗東坂路で調教駆けする地方交流重賞2勝馬のワイルドフラッパーと互角の動きを見せており、休み明けを感じさせない好仕上がりで復帰戦を迎えられそうだ。トライアルのここで日本ダービーの敗戦を払拭し、本番の菊花賞にめどを立てたいところだろう。

ウインフルブルーム(牡3・宮本博)は、クラシック三冠の第1戦・皐月賞で8番人気ながら3着に好走したあと、日本ダービーへの出走を予定していたが、左肩跛行を発症してレースの2日前の金曜日に出走取消となった。その後は放牧で立て直しを図られて、9月10日に栗東トレーニング・センターへ帰厩。ここでの復帰に向けて調整されてきた。17日の1週前追い切りは、栗東CWコースで6ハロン79秒6という速い時計をマークしたが、最後は脚が上がっていたように、動きは今ひとつの印象。このひと追いで息ができて、直前の追い切りで良化を見せれば、まずまずの仕上がりで出走できるかもしれない。

サウンズオブアース(牡3・藤岡健一)は、前々走の京都新聞杯で2着を確保して収得賞金の加算に成功し、前走の日本ダービーに出走。11着と好結果を残すことができなかったが、当時は馬体がまだ成長途上の状態で、3走前の500万下・はなみずき賞(阪神・芝2000m、1着)→京都新聞杯→日本ダービーと、中2週のローテーションが続いて日程的にも厳しかった印象。GI で強敵相手に戦った経験が糧になれば、この秋に飛躍を遂げても不思議はない。

ヤマノウィザード(牡3・山内研二)は、前走の青葉賞で勝ち馬のショウナンラグーンからアタマ+1/2馬身差の3着に敗れ、惜しくも日本ダービーの優先出走権を逃してクラシックの大舞台を踏めなかった。母のランフォザドリームは1998年にマーメイドSと朝日チャレンジCを優勝し、同年のエリザベス女王杯で2着に好走と、古馬になって本格化を遂げた晩成タイプ。この馬がトライアルの神戸新聞杯で3着以内に入って優先出走権を獲得できれば、本番の菊花賞でも面白い存在になるだろう。

今回の舞台となる阪神・外回りの芝2400mでは、今春の未勝利、500万下のアザレア賞をいずれも好位追走の競馬で連勝し、2戦2勝と好相性のダンディーズムーン(牡3・中村均)。その後は前々走の京都新聞杯で14着と大敗を喫したあと、約3か月半の休養を挟んで臨んだ前走の1000万下・支笏湖特別(札幌・芝2600m)で9着に敗退。近2走の敗戦はともに後方からの競馬で、本来の積極策が取れなかったものだ。得意の舞台でマイペースの先行がかなえば、菊花賞の優先出走権を獲得するチャンスはあるだろう。

シャンパーニュ(牡3・加用正)は、前々走の1000万下・阿寒湖特別(札幌・芝2600m)でアタマ差の接戦を制して3勝目をマーク。昇級初戦となった前走の1600万下・TVh賞(札幌・芝2000m)は14着に敗れたが、勝ち馬のアズマシャトル(昨年のラジオNIKKEI杯2歳S2着)から0秒7差と着順ほど大きくは負けていない。スタミナを要するタフなレースが得意な馬で、芝2400mのトライアルで好結果を残せるようなら、芝3000mの菊花賞本番が楽しみになる。