11R 第150回 天皇賞(秋)(GI)

11R 第150回 天皇賞(秋)(GI) 出走馬

イスラボニータ



秋シーズンの始動戦となった前走のセントライト記念(新潟・芝2200mで開催)は、2着馬につけた1馬身1/4という着差以上に能力の違いを感じさせる圧巻の勝ちっぷりだった。1コーナーの手前で少し折り合いを欠くようなシーンはあったものの、その後は好位をスムーズに追走。最後の直線で先に抜け出したトゥザワールド(2着)を外から並ぶ間もなく抜き去ると、最後は蛯名正義騎手が手綱を抑える余裕のレースで、悠々とゴールインした。デビュー当時に比べると折り合い面で格段の進境が見られ、肉体的にも着実な成長を遂げている印象がある。今回の舞台となる東京・芝コースは〔4・1・0・0〕とほぼパーフェクトな成績で、2000mの距離も今春の皐月賞を快勝しており、条件はぴったりと言える。さらに、休み明けで臨む有力馬が多い中、秋に一度使われた上積みが見込める点も大きなアドバンテージとなるはず。2002年(中山・芝2000mで開催)のシンボリクリスエス以来12年ぶりとなる、3歳馬による天皇賞(秋)制覇を大いに期待できるだけの逸材だ。

フェノーメノ



前哨戦の日経賞で5着と敗退していたため、前走の天皇賞(春)は、前年の覇者でありながら4番人気にとどまっていた。しかし、約9か月の長期休養明けだった日経賞で8キロ減っていた馬体が10キロ増の498キロと回復し、見た目にも良化は歴然と感じられた。レースでは、前半こそ少し掛かり気味になったものの、1周目のスタンド前ではうまく折り合い、その後は抜群の手応えで馬場の内めを追走。2周目の3~4コーナーで徐々に外へ進出すると、最後の直線ではウインバリアシオン(2着)との激しい競り合いをクビ差制し、天皇賞(春)連覇を達成した。3歳時に挑戦した2012年の天皇賞(秋)では、優勝馬エイシンフラッシュから0秒1差の2着と接戦を演じており、芝2000mの距離も十分に守備範囲。今回は約半年ぶりの実戦となるが、3度目の天皇賞制覇を飾るチャンスは十分だろう。 JRAの数あるGI 競走の中でも、最も伝統と格式のあるビッグレースが天皇賞。1年に2回、春と秋に開催されており、今秋で節目の通算150回目を迎える。かつては春秋ともに芝3200mの長距離だったが、1984年のグレード制導入と同時に、秋のみ芝2000mに距離を短縮。芝・中距離路線における現役最強馬決定戦という位置付けになり、現在に至っている。10月5日にフランスで行われた国際G1・凱旋門賞(ロンシャン・芝2400m)に挑戦したハープスター(6着)、ジャスタウェイ(8着)、ゴールドシップ(14着)という大物3頭こそ不在ながら、今年もGI ホース6頭を含む豪華な顔ぶれが集結。秋深まる東京ターフを舞台に、ハイレベルなV争いが繰り広げられる。

今年の出走メンバーの中で実績最上位は、文句なしにGI・6勝の名牝ジェンティルドンナ(牝5・石坂正)だ。2012年には、桜花賞・オークス・秋華賞の“牝馬三冠”を達成したうえ、歴戦の古馬を相手にジャパンカップも制して、JRA賞年度代表馬、最優秀3歳牝馬に選出された。翌2013年には、史上初のジャパンカップ連覇を達成。5歳を迎えた今年は、UAEに遠征して国際G1・ドバイシーマクラシック(メイダン・芝2410m)を制覇、初の海外G1 タイトルを獲得した。帰国初戦の前走・宝塚記念は精彩を欠く走りで9着に敗れたが、この一戦だけで能力が衰えたと考えるのは早計だろう。無事に夏を過ごし、この天皇賞(秋)に向けての調整も順調そのもの。約4か月の休養明けでも、主役の座は譲れない。

フェノーメノ(牡5・戸田博文)は、3歳時の2012年に日本ダービーと天皇賞(秋)で2着。惜しくもGI タイトルを逃したが、4歳を迎えると一段とパワーアップ。2013年の天皇賞(春)を快勝して待望のビッグタイトルを手に入れた。しかし、次走の宝塚記念(4着)のあとに脚部不安を発症したため、同年の秋シーズンは休養。約9か月ぶりの復帰戦となった前々走の日経賞は5着に敗れたものの、続く前走の天皇賞(春)では大幅な変わり身を見せて、見事に連覇を達成した。その後は宝塚記念を見送って放牧で疲れを癒し、8月末に美浦トレーニング・センターへ帰厩。この天皇賞(秋)に向けて、入念に乗り込まれている。調教では休み明けを感じさせないシャープな動きを見せており、天皇賞(春・秋)制覇および3度目の天皇賞制覇という偉業達成の期待が懸かる。

現3歳世代を代表する強豪イスラボニータ(牡3・栗田博憲)の参戦は、今年の天皇賞(秋)における最大のトピックと言えよう。3歳クラシック三冠の1戦目となる皐月賞を4連勝で制覇。続く日本ダービーは優勝馬ワンアンドオンリーから0秒1差の2着に惜敗したが、秋シーズンの始動戦となった前走の菊花賞トライアル・セントライト記念(新潟・芝2200mで開催)は、力の違いを見せつけるような走りで完勝。ここまでクラシックの王道を歩み、通算成績は〔6・2・0・0〕とすべて連対をキープしている大物だ。陣営は前走後に芝3000mの菊花賞ではなく、芝2000mの天皇賞(秋)参戦を表明。他世代との対戦は初めてとあって力関係はまったくの未知数だが、まだ底を見せておらず、4歳以上の馬たちより2キロ軽い56キロの負担重量で戦えるのは有利な材料。どんな走りを見せてくれるか楽しみだ。

エピファネイア(牡4・角居勝彦)は、2歳時にメイクデビュー京都(芝1800m)→オープン特別の京都2歳S(京都・芝2000m)→ラジオNIKKEI杯2歳Sと無傷の3連勝をマーク。3歳春のクラシックは皐月賞、日本ダービーでともに2着と惜敗したが、トライアルの神戸新聞杯を楽勝して臨んだクラシック三冠最終戦の菊花賞では、2着馬サトノノブレスに5馬身差をつけて悠々と先頭でゴールイン。圧巻の強さで初のGI タイトルを獲得した。4歳を迎えた今年は、始動戦の産経大阪杯が3着、初の海外遠征となった国際G1・クイーンエリザベス2世C(シャティン・芝2000m)は4着に敗れた。その後は休養に入り、今回は約半年ぶりの戦列復帰となる。現4歳世代で屈指の強豪が、久々の実戦でどんなパフォーマンスを見せてくれるのか、大いに注目したい。

マイネルラクリマ(牡6・上原博之)は、2010年の新潟2歳S2着など早い段階から素質の片鱗を見せ、4歳時の2012年にGIII・京都金杯で重賞初制覇を達成。その後も2013年のGIII・七夕賞Vなど、芝の中距離重賞でコンスタントに上位争いを演じてきた。6歳を迎えた今年は国際G1・チャンピオンズマイル(シャティン・芝1600m、10着)で初の海外遠征を経験し、帰国後はエプソムC2着→七夕賞3着と安定感が一段とアップ。前走の産経賞オールカマー(新潟・芝2200mで開催)で初のGII 制覇を飾った。キャリアを積みながら少しずつステップアップし、6歳秋を迎えた今が充実期というムードが漂っている。現在の勢いなら、GI の大舞台でも上位に食い込むチャンスは十分あるはずだ。

デニムアンドルビー(牝4・角居勝彦)は、3歳時の昨年にオークストライアルのフローラS、秋華賞トライアルのローズSと、GII を2勝。3歳牝馬限定GI はオークスが3着、秋華賞は4着だったが、古馬と初対戦したエリザベス女王杯5着を経て、海外の強豪も参戦した次走のジャパンカップでは後方待機から直線で素晴らしい末脚を繰り出し、優勝馬ジェンティルドンナとハナ差の2着に好走した。4歳を迎えた今年は、初の海外遠征となった国際G1・ドバイシーマクラシックで10着に大敗。帰国後もヴィクトリアマイル7着、宝塚記念5着とV争いには持ち込めなかったが、能力は文句なしにGI 級。夏場の休養でリフレッシュされた今回は、その非凡な素質を見直す必要がある。

マーティンボロ(牡5・友道康夫)は、今年2月に1600万下の飛鳥S(京都・芝1800m)を制して待望のオープンクラス入りを果たすと、続く中日新聞杯で10番人気の低評価を覆して重賞初制覇を達成。その後に約5か月の休養を挟んで出走した前々走の小倉記念は0秒3差の2着に敗れたが、前走の新潟記念を優勝し、逆転で『サマー2000シリーズ』のチャンピオンに輝いた。今回はGI 初挑戦で相手関係が一気に強化されるが、今年に入ってからの充実ぶりは出走メンバーの中でも屈指のものがあるだけに、勢いに乗って大仕事をやってのける可能性も十分だ。

ディサイファ(牡5・小島太)は、4歳時の昨年5月上旬までは500万下クラスで勝ちきれない競馬が続いていたが、その後に急激に成長を遂げ、10月に1600万下の甲斐路S(東京・芝1800m)を快勝してオープンクラス入りを果たした。昇級後は善戦止まりのレースが続いたが、3度目の重賞挑戦となった前々走のエプソムCで初の重賞タイトルを獲得。約4か月の休養明けで臨んだ前走の毎日王冠は、最終追い切りの動きがひと息で7番人気の評価ながら、好位を追走してしっかりと折り合い、直線でしぶとく粘って優勝馬エアソミュールから0秒1差の4着と上位争いに加わっている。実戦を一度使われた上積みが見込める今回、好勝負の期待が高まる。

スピルバーグ(牡5・藤沢和雄)は、3歳の春シーズンに共同通信杯と毎日杯で3着、ダービートライアルのプリンシパルS(東京・芝2000m)を快勝するなど活躍。日本ダービー(14着)後に1年以上の長期休養を経験したが、復帰2戦目の1000万下・神奈川新聞杯を快勝すると、勢いに乗って1600万下のノベンバーSをクビ差で優勝。6か月半の休養を挟んでオープン特別のメイS(いずれも東京・芝1800m)を制し、3連勝を飾った。さらに約4か半の休養明けで挑んだ前走の毎日王冠も、後方待機から直線で鋭く末脚を伸ばして1着馬エアソミュールからクビ+クビ差の3着に好走。今回は重賞未勝利の身でのGI 挑戦となるが、潜在能力はまったく引けを取らない。

ラブイズブーシェ(牡5・村山明)は、キャリアを積みながら徐々に力をつけ、昨年7月に1600万下の五稜郭S(函館・芝2000m)を制してオープンクラス入り。同年暮れにはグランプリの有馬記念で12番人気ながら4着と大健闘した。その後の3戦はひと息の競馬が続いたが、3走前の目黒記念で2着と重賞で初めて連対を果たすと、前々走の函館記念で待望の重賞初制覇を達成した。前走の札幌記念は1着馬ハープスターと2着馬ゴールドシップには大きく離された4着に敗れたが、3着馬ホエールキャプチャとは僅かに0秒1差。本馬とハナ差の接戦を演じたエアソミュール(5着)が次走の毎日王冠を優勝しているだけに、価値ある4着と評価するべきだろう。

カレンブラックヒル(牡5・平田修)は、3歳1月のメイクデビュー京都(芝1600m)から無傷の4連勝でNHKマイルCを制覇。同年秋の毎日王冠も制して連勝を「5」に伸ばしたが、続く天皇賞(秋)で5着と初黒星を喫した。その後はやや低迷していたものの、今年2戦目のダービー卿チャレンジTで復活を告げる重賞4勝目を飾った。秋シーズンの初戦となった前走の産経賞オールカマーは着順こそ7着ながら、優勝馬マイネルラクリマとは僅かに0秒2差。好調時の勢いを取り戻しつつあるだけに、軽視は禁物だろう。

トーセンジョーダン(牡8・池江泰寿)は、2011年の天皇賞(秋)優勝馬。このレースでマークした1分56秒1の優勝タイムは、現在も芝2000mのJRAレコードタイムとしてさん然と輝いている。その後は、同年のジャパンカップ2着や2012年の天皇賞(春)2着とGI で連対実績があるものの長く勝ち星から遠ざかっており、8歳を迎えた今年は2戦して鳴尾記念8着、宝塚記念10着という成績。やや年齢的な衰えが見られる点は否定できない現状だが、7歳時の昨年はジャパンカップで11番人気の低評価を覆して3着に善戦しており、底力は侮れない。