大幅にリニューアルされたクラシック前哨戦 「第31回 ホープフルステークス」
昨年までこの時期に阪神・芝2000mで行われていたラジオNIKKEI杯2歳Sが、今年からホープフルSに改称され、グレードはGIII からGII に、コースも中山・芝2000mに変更された。昨年のラジオNIKKEI杯2歳Sを勝ったワンアンドオンリーは、今年の日本ダービーを制して世代の頂点に立った。これまでクラシックウイナーを数多く輩出してきたレースだけに、リニューアルされた今後も将来性豊かな2歳馬による熱戦が期待できるだろう。今回は過去10年のラジオNIKKEI杯2歳Sをサンプルとして、コース変更の影響が小さそうなファクターを中心にレースの傾向を分析してみたい。

出走馬情報
2歳馬の競走体系のさらなる充実とローテーションを整備する観点から、昨年まで暮れに阪神・芝2000mで行われていたGIII の“ラジオNIKKEI杯2歳S”が、皐月賞と同じ中山・芝2000mに舞台を移したうえで、今年からGII に格上げされ、“ホープフルS”と名称を変更して行われることになった。2歳馬の芝・中距離路線の頂点に位置づけされたことで、今後はその重要性が一段と増していくことだろう。今年の登録メンバーは大半が1勝馬ながら、豊かな将来性を感じさせる若駒が多数エントリー。この一戦を制して、来年のクラシック候補に名乗りを上げるのは果たしてどの馬だろうか。

出走メンバーの中で実績ナンバー1は、ダイワメジャー産駒のダノンメジャー(牡2・橋口弘次郎)だ。8月10日のメイクデビュー小倉(芝1800m)を1番人気に応えて勝ち上がると、2戦目のオープン特別・野路菊S(阪神・芝1800m)も鮮やかに差し切って連勝。その後に約2か月半の休養を挟んで出走した前走の新設GIII・ラジオNIKKEI杯京都2歳Sでは2着と初黒星を喫したものの、優勝馬ベルラップとタイム差なしの接戦を演じた。まだ底を見せていない点は、大きなセールスポイントと言える。中3週のローテーションで臨む今回は、上積みを見込める臨戦課程。栗東坂路で12月18日に4ハロン57秒4、21日に同56秒2の時計をマークするなど、順調に調整が進められている。ここは、重賞初制覇の大きなチャンスだろう。

ソールインパクト(牡2・戸田博文)は、デビュー前から素材の良さを高く評価されていたディープインパクト産駒。8月10日のメイクデビュー新潟、2戦目の未勝利(ともに新潟・芝1600m)はいずれも1番人気で2着に惜敗したが、3戦目の未勝利(東京・芝1600m)で初勝利を飾ると、一気に相手関係が強化された前走の東京スポーツ杯2歳Sでも優勝馬サトノクラウンから0秒1差の3着と上位争いを演じた。JRAでデビューした半兄の2頭、クリティカルヒット(父Smart Strike)とファイネスト(父ゼンノロブロイ)はこれまでに勝ち鞍をすべてダートのレースで挙げているが、本馬は芝で父譲りの鋭い決め手を発揮している。キャリアを積みながら徐々に力をつけている印象もあり、前走以上のパフォーマンスが期待できるだろう。

11月9日のメイクデビュー京都(芝2000m)で2着馬クロイツェルに3馬身1/2差をつけて楽勝したシャイニングレイ(牡2・高野友和)も、大いに注目したいディープインパクト産駒だ。母シェルズレイは、3歳時の2006年にチューリップ賞とローズSでともに2着と好走し、桜花賞と秋華賞でともに5着と掲示板を確保するなど、牝馬三冠戦線を大いににぎわせた活躍馬。本馬を含め、これまでにJRAでデビューした産駒4頭がすべて勝利を挙げており、繁殖牝馬としても高い資質を示している。1戦1勝の身でいきなり重賞に挑戦するのは決して楽ではないが、本馬の素質は間違いなく一級品。母が手に入れることができなかった重賞タイトルを、この馬はデビュー2戦目であっさりと獲得する可能性も十分にあるだろう。

ティルナノーグ(牡2・松永幹夫)も、育成時代から注目を集めていたディープインパクト産駒の逸材だ。単勝オッズ1.5倍という断然の1番人気に推された6月29日のメイクデビュー阪神(芝1800m)で、先行策から競り合いを制して初陣V。その後に約3か月半の休養を挟んで出走した500万下の紫菊賞(京都・芝2000m)では、一転した待機策から最後の直線で素晴らしい末脚を繰り出し、2分00秒5の2歳コースレコードをマークして連勝を飾った。3戦目となった前走のラジオNIKKEI杯京都2歳Sでは7着と思わぬ完敗を喫したが、デビュー2戦のパフォーマンスは文句なしにハイレベル。一度の敗戦で底を見せたと考えるのは早計で、今回も有力候補の一頭に数えられる。

ディープインパクトの全兄にあたるブラックタイドを父に持つコメート(牡2・土田稔)は、デビュー2戦目の未勝利(福島・芝1800m)で初勝利をマーク。さらに、12番人気と注目度が低かった3戦目の新潟2歳Sでも、2歳コースレコード(1分33秒4)で優勝したミュゼスルタンから0秒4差の4着に食い込み、8番人気の低評価を覆した未勝利Vが本来の実力であったことを証明した。続く前走の500万下・きんもくせい特別(福島・芝1800m)では、デビュー以来初めて1番人気に支持され、2番手追走から直線であっさりと抜け出し、2着馬の追撃をクビ差退けるという期待どおりの走りで2勝目をマーク。勇躍、重賞のホープフルSに駒を進めてきた。今回、特別登録を行ったJRA所属馬で2勝を挙げているのは、本馬を含めて3頭のみ。十分に戴冠を狙える位置にいる。

タンタアレグリア(牡2・国枝栄)は、厩舎期待のゼンノロブロイ産駒。7月6日のメイクデビュー福島(芝1800m)ではスタートで出遅れながらも後方追走から最後の直線で強烈な末脚を繰り出して2着まで追い上げた。2戦目の未勝利(新潟・芝1600m)もハナ差の2着に惜敗したが、約4か月の休養を挟んで出走した前走の未勝利(東京・芝2000m)を直線で外から一気に差し切り、3戦目で初勝利をマークしている。同じ国枝栄厩舎所属で、2012年に桜花賞トライアルのアネモネS(中山・芝1600m)と秋華賞トライアルの紫苑S(中山・芝2000m)を制したパララサルー(父ディープインパクト)の半弟にあたる良血馬。先週の朝日杯フューチュリティSを制したダノンプラチナに続き、国枝栄厩舎からまた一頭、クラシック候補の誕生なるか。レースでの走りが実に楽しみだ。
ハーツクライ産駒のシュヴァルグラン(牡2・友道康夫)は、9月21日のメイクデビュー阪神(芝2000m)ではクビ差の2着に惜敗したものの、2戦目の未勝利(京都・芝2000m)を1番人気の支持に応えて順当に初勝利。続く前走のラジオNIKKEI杯京都2歳Sは8頭立ての5番人気だったが、最後方から出走馬中最速の上がり3ハロンタイム(34秒3、推定)をマークして3着まで追い込んだ。2013年と2014年のヴィクトリアマイルを連覇したヴィルシーナ(父ディープインパクト)の半弟にあたる良血馬。その姉ヴィルシーナは、このホープフルS(9R)当日のメインレースとして行われる有馬記念(10R)に出走を予定しており、姉弟による同日&同場での重賞制覇というグレード制導入後、初の快挙も懸かっている。

エニグマバリエート(牡2・戸田博文)は、10月12日のメイクデビュー東京(芝1800m)では中団後方からじりじりとしか伸びずに5着に敗れたが、2戦目の未勝利(東京・芝2000m)でレースぶりが一変。道中3番手追走から最後の直線で早めに先頭に立ち、1番人気の支持を受けたヒアカムズザサン(2着)の追撃をクビ差しのいで初勝利を挙げた。母ティエッチグレースは2003年のアイビスサマーダッシュ2着などスプリント路線で活躍したが、父ハーツクライの影響を強く受けた印象がある本馬は芝の中長距離に高い適性を感じさせる。前走の走りを見る限り、小回りでスピードの活きる中山・芝コースは合っている公算が大きい。
レトロロック(牡2・角居勝彦)は、8月31日のメイクデビュー小倉(芝1800m)を1番人気に応えて鮮やかに差し切ったディープインパクト産駒。2戦目の500万下・黄菊賞(京都・芝2000m)はハナ差の2着に惜敗したが、先着を許した1着馬ベルラップは、次走のラジオNIKKEI杯京都2歳Sを制覇。価値の高い2着と評価するべきだろう。前走の500万下・シクラメン賞(阪神・芝1800m)では、道中で折り合いを欠いて6着に完敗しているが、潜在能力は間違いなく重賞級。スムーズに折り合ってレースを運べるようなら、V争いに加わってくるだろう。

バゴ産駒のブラックバゴ(牡2・斎藤誠)は、2番人気の支持を受けた9月14日のメイクデビュー新潟(芝1800m)で2着を確保したあと、2か月半の間隔をあけて臨んだ前走の未勝利(東京・芝1800m)では、中団追走からメンバー中2位となる上がり3ハロン34秒2(推定)の末脚を発揮して鮮やかに差し切った。重賞のメンバーに入っても、決め手の鋭さはまったく引けを取らないものがある。

ヒルノマレット(牡2・北出成人)は、7月26日のメイクデビュー中京(芝1600m)で初陣を飾ったキングカメハメハ産駒。大外8枠16番からスタートし、二の脚を利かせて2番手までポジションを上げると、直線半ばから力強く抜け出して1馬身3/4差の快勝劇を演じた。前走のオープン特別・野路菊Sでは互角のスタートから二の脚を利かせて先手を奪い、優勝馬ダノンメジャーから0秒3差の4着に逃げ粘っている。脚をためる形よりも、スピードを活かす形で前々につけて、直線でしぶとさを発揮する競馬が合っている印象が強い。中山・芝2000mの舞台は脚質的に向いているはずだ。

現2歳世代が初年度産駒デビューとなる輸入新種牡馬バトルプランを父に持つマイネルシュバリエ(牡2・和田正道)は、7月27日のメイクデビュー福島(芝1800m)を1番人気に応えて快勝。2戦目の札幌2歳Sでは14頭立ての11番人気と注目度は低かったが、3番手追走からゴールまでしぶとく末脚を伸ばして、優勝馬ブライトエンブレムから0秒2差の2着に好走した。前走の東京スポーツ杯2歳Sは12着と大敗を喫したが、約2か月半ぶりの実戦で馬体重(478キロ)がプラス20キロと大幅に増えていたうえに、イレ込んで本来の力を発揮できなかった印象が強い。中4週で臨む今回、見直す余地は十分に残されているだろう。