飛躍を誓う3歳牝馬によるマイル重賞「第31回 フェアリーステークス」
2009年以降、年明けの中山・芝1600mを舞台として行われているフェアリーSは、3歳牝馬たちが覇を競う重賞レース。このあとは、2月のクイーンCや、桜花賞の各トライアル競走を経て、本番に向かう牝馬クラシック路線が確立されている。若き乙女たちの将来を占う意味でも重要な一戦と言えるだろう。近年は僅差で決着するシーンが多く、2013年は優勝馬クラウンロゼから5着馬スイートサルサまでのタイム差が0秒1。2014年も優勝馬オメガハートロックから7着馬シーロアまでが0秒2差以内でゴールインする大接戦になっており、ゴール前では白熱した攻防が繰り広げられている。新春の中山競馬場のターフで輝きを放ち、桜の季節を待つのはどの馬か?乙女たちの熱戦から目を離せない。

オーミアリス(牝3・藤沢則雄)は、前々走の小倉2歳Sで17頭立ての15番人気という低評価を覆して重賞初制覇を達成したホワイトマズル産駒。道中は後方に待機してじっくり脚をため、最後の直線で大外に持ち出されると、前を走っていた馬たちをごぼう抜き。マークした上がり3ハロン34秒3(推定)は出走メンバー中断然の1位で、その切れ味は一級品と言えるもの。約3か月の休み明けでの出走となった前走の阪神ジュベナイルフィリーズの敗戦(9着)は、スタートで後手に回ったうえに、向正面で他の馬に寄られるアクシデントがありスムーズなレースができなかったためで、参考外と判断してもいいだろう。今回は初参戦の中山・芝1600mが舞台となるが、距離は前走に続いて2度目で慣れが見込めるうえ、放牧明けを一度使われて状態面の上積みも期待できるだけに、2つ目の重賞タイトル獲得も十分に可能だろう。

ハーツクライ産駒のコートシャルマン(牝3・松永幹夫)は、半兄に2012年の安田記念優勝馬ストロングリターン(父シンボリクリスエス)、半姉に2013年の桜花賞2着馬レッドオーヴァル(父ディープインパクト)を持つ、厩舎期待の良血馬。単勝オッズ1.4倍の圧倒的な1番人気の支持を受けて登場した7月6日のメイクデビュー中京(芝1400m)では、素晴らしい切れ味を発揮して初陣勝ち。2戦目の500万下・りんどう賞(京都・芝1400m)でも、最後の直線で馬群の外に持ち出されると、目の覚めるような末脚を披露して2連勝を達成。前評判に違わぬ能力の高さを示した。3番人気の支持を受けた前走の阪神ジュベナイルフィリーズでは、道中でうまくスタミナを温存できなかったことで、身上の末脚を発揮できず10着と大敗を喫した。しかし、レース後は疲れもなく、この中間の調教でも引き続き軽快なフットワークを見せて好調をアピールしているだけに、今回初参戦となる中山・芝1600mが舞台でも巻き返しは十分に可能だろう。重賞初制覇のチャンス到来だ。

ハービンジャー産駒のカービングパス(牝3・藤沢和雄)は、母に2003年の京都牝馬S優勝馬ハッピーパスを持つ、厩舎ゆかりの良血馬。母は、3歳時の2001年にクイーンC2着→フィリーズレビュー2着→桜花賞4着→オークス7着とクラシック路線を歩んだが、この馬も、8月10日のメイクデビュー札幌(芝1500m)を鮮やかな末脚で制し、素質と完成度の高さをアピールしている。前走の500万下・赤松賞(東京・芝1600m)では、ゴール前のひと伸びを欠き1番人気の支持に応えることはできなかったが、3着を確保。勝ち馬のディアマイダーリンとのタイム差はわずかに0秒1で、約3か月半の休み明けだったことを考慮すれば、次につながる内容と判断してもいいだろう。この中間は美浦坂路で軽快なフットワークを披露しており、実戦を一度使われた効果がうかがえる。今回は重賞初挑戦になるが、素質では互角以上の存在と思えるだけに、重賞タイトル獲得のシーンが期待される。

テンダリーヴォイス(牝3・萩原清)は、6月22日にメイクデビュー東京(芝1600m)を快勝、2戦目の500万下・アスター賞(新潟・芝1600m)でも勝ち馬のコスモナインボールからクビ差の2着に好走しているように、早い時期から能力の高さを見せていたディープインパクト産駒。前々走のアルテミスSは10着と大敗を喫したが、巻き返しを期した前走の500万下・赤松賞では、好位追走から上がり3ハロン33秒8(推定)の末脚を繰り出して2着に好走。勝ち馬のディアマイダーリンとはハナ差の接戦で、勝ちに等しい内容と言っていいだろう。今回は初めて右回りコースに出走するが、レースセンスの良さと器用さを備えているだけに、問題なく対応できるだろう。中間の調教でもはつらつとした動きを続けており、好勝負が期待できる。

アルデバランII 産駒のトーセンラーク(牝3・菅原泰夫)は、6月7日のメイクデビュー東京(芝1400m)で5着に敗れたあと、2戦目の未勝利(東京・芝1600m)で初勝利をマーク。その後は北海道に遠征し、函館2歳S4着→オープン特別のクローバー賞(札幌・芝1500m)優勝という活躍を見せた。約3か月の休養明けで臨んだ3走前のアルテミスSでは、道中は好位を追走し、最後の直線でも粘り強い末脚を発揮して、勝ち馬のココロノアイから0秒2差の3着に好走。重賞タイトル獲得に向けて確かな手応えをつかんだ。前々走のJpnII・兵庫ジュニアグランプリ(園田・ダート1400m)3着を経てエントリーした前走の阪神ジュベナイルフィリーズは17着と大敗を喫したが、向正面で他の馬に寄られるアクシデントがあっただけに、この一戦だけで見限ることはできないだろう。先行して抜け出す器用さがあるうえに、じっくり脚をためればゴール前で瞬発力を発揮できるタイプ。強敵を相手に戦ってきた経験を活かせば勝機は見出せそうだ。

キングカメハメハ産駒のアドマイヤピンク(牝3・戸田博文)は、今回と同じ中山・芝1600mで行われた前走の500万下・ひいらぎ賞で大外から鋭い末脚を発揮。勝ち馬のキャットコインから1馬身1/4差の2着に好走し、能力とコース適性の高さを示している。稍重発表の馬場状態を考慮すれば、1分35秒3の走破タイムも上々。3走前のオープン特別・芙蓉S(新潟・芝1800m)では逃げる競馬で4着という結果だったが、現時点では、道中で脚をためて最後の直線での末脚勝負に徹するレースのほうが持ち味を活かせる印象だ。すでに中山・芝1600mを経験して好結果を残していることはアドバンテージになる。ハイペースの展開になれば、ゴール前で一気に追い込んでくる場面がありそうだ。磨きをかけた末脚で重賞のタイトル奪取に挑む。

ブラックタイド産駒のエヴァンジル(牝3・菊川正達)は、11月30日のメイクデビュー東京(芝1600m)で初陣を迎えたものの、スタートがひと息で道中は後方のインを追走。しかし、最後の直線では狭いスペースにも臆することなく、馬群の中からメンバー中最速の上がり3ハロン34秒3(推定)の末脚を披露して、勝ち馬のトゥルッリからクビ差の2着まで追い上げた。3着馬ウインオリファンには3馬身差をつけており、中身の濃いレース内容と言える。2戦目の未勝利(中山・芝1800m)でも、最後の直線で内から見事な瞬発力を発揮。レトロクラシック(2着)をクビ差交わして初勝利を飾った。まだキャリアは2戦だが、非凡な勝負根性に加えて、鋭い切れ味も兼備。初の重賞挑戦で相手は強化されるが、好勝負が期待される一頭だ。

ローデッド(牝3・荒川義之)は、半姉に重賞4勝馬オースミハルカ(父フサイチコンコルド)、半兄に2006年と2008年の新潟大賞典優勝馬オースミグラスワン(父グラスワンダー)を持つディープインパクト産駒。デビュー3戦目となった前走の未勝利(中京・芝2000m)で、2分02秒2の2歳コースレコードをマークして初勝利をマークした。今回は、重賞初挑戦のうえに、前走から距離が400m短縮される点が鍵となる。これまでの3戦はすべてスタートで後手に回っているだけに、順調にレースを進めて、しっかりと能力を発揮したいところだ。

メイショウメイゲツ(牝3・小島太)は、昨年8月2日のメイクデビュー新潟(芝1400m)で初陣を飾ったディープインパクト産駒。互角のスタートからスッと好位置につけると、最後の直線でもシャープな反応を示し、楽に抜け出すセンスの良さを見せた。3か月の休養を経て臨んだ前々走のアルテミスSでは、道中で折り合いを欠くような面を見せて17頭立ての16着に敗れたが、前走の500万下・赤松賞では、出走馬中最速タイとなる上がり3ハロン33秒6(推定)の末脚を繰り出してインを強襲。勝ち馬のディアマイダーリンから0秒3差の4着まで追い上げ、あらためて能力の高さを示した。今回は初参戦の中山・芝コースが舞台となるが、これまで先行・差しと自在のレースぶりを見せており、対応は十分に可能だろう。中間の調教の動きから目下の状態の良さも目立つ一頭だけに、上位進出が期待される。

マラケシュ(牝3・佐藤吉勝)は、10月25日のメイクデビュー東京(芝1600m)を逃げ切って好発進を遂げたヴァーミリアン産駒。2戦目となった前走の500万下・赤松賞では、見せ場を作ることができず11頭立ての11着と大敗を喫したが、控える競馬になり持ち味を出せなかった印象。初戦のようにうまくマイペースに持ち込むレースができれば、大きく巻き返すことも可能だろう。この中間の調教では目立つ動きを披露しているだけに、前走の敗戦だけで見限ることはできない。

ケイムホーム産駒のトラストレイカ(牝3・尾関知人)は、美浦トレーニング・センターへ入厩したあとに軽い骨折をしてデビューが遅れたが、12月13日のメイクデビュー中山(ダート1200m)でいきなり初勝利をマーク。ダートのレースでの初陣だったが、軽いフットワークを見せていただけに、芝のレースにも十分に対応可能だろう。前走後は、実戦を使われた反動もなく好調を維持。一気の相手強化と初の芝コースをクリアして、重賞初制覇を飾りたいところだ。