多彩なメンバーが集う中距離重賞 「第56回 アメリカジョッキークラブカップ」

新春の中山競馬を彩る重賞のひとつとして定着しているアメリカジョッキークラブCは、芝2200mの距離で行われる4歳以上のGII レース。GI のタイトルを持つビッグネームが一年の始動戦として登場するケースもあれば、力をつけてきた上がり馬が本レースでの好走を経て大きく飛躍した例もある。その年の4歳以上の芝・中長距離路線を占ううえで重要度の高い一戦と言えよう。今年も、GI・5勝の大物ゴールドシップを筆頭に、今後のGI 戦線を大いににぎわせてくれそうな好素材が多数エントリー。厳寒期の中山競馬場で、ハイレベルなV争いが繰り広げられる。

今年のアメリカジョッキークラブCにおける最大のトピックは、現役最高レベルの実績を持つゴールドシップ(牡6・須貝尚介)の参戦だ。3歳時の2012年に皐月賞、菊花賞、有馬記念を制してJRA賞最優秀3歳牡馬のタイトルを獲得。さらに2013年と2014年の宝塚記念を優勝して同レース史上初の連覇を達成し、現役では最多となる5つの芝のGI タイトルを保持している。初の海外遠征を敢行した前々走の国際G1・凱旋門賞(ロンシャン・芝2400m)では14着と大敗を喫したが、帰国初戦となった前走の有馬記念では優勝したジェンティルドンナから0秒1差の3着と実力馬健在をアピール。この中間の調教では、さらなる体調アップを感じさせる素晴らしい動きを見せている。本馬以外にGI ホースが不在の今回、主役の座は譲れないところだろう。
フェイムゲーム(牡5・宗像義忠)は、これまでに2013年の京成杯、2014年のダイヤモンドS、アルゼンチン共和国杯と重賞を3勝。GI では昨年の天皇賞(春)と宝塚記念の6着が最高着順だが、その天皇賞(春)ではゴールドシップ(7着)に先着を果たしている。2馬身1/2差で快勝した前走のアルゼンチン共和国杯後はグランプリ・有馬記念への挑戦を表明していたものの、収得賞金不足で出走がかなわなかった。このアメリカジョッキークラブCに目標を切り替える形になったが、引き続き順調に調教を積まれて上々の気配を保っている。5歳を迎えた今年はさらなる飛躍が期待されるだけに、強敵相手となる始動戦でどんなパフォーマンスを見せてくれるか楽しみだ。
ゴールドシップと同じ世代のエアソミュール(牡6・角居勝彦)は、キャリアを積みながら徐々にステップアップを遂げてきた。2013年の大阪城S(阪神・芝1800m)を皮切りにオープン特別を4勝し、5歳時の2014年6月に鳴尾記念を制して待望の重賞初制覇を飾った。3走前の札幌記念は勝ち馬のハープスターから1秒0離された5着と敗れたが、好メンバーがそろった前々走の毎日王冠で重賞2勝目をマーク。GI のビッグタイトルを狙えるところまで力をつけてきている。前走の金鯱賞も、1分58秒8のコースレコードで優勝したラストインパクトから0秒3差の3着。以前よりも安定感が格段に増しており、今回も優勝争いに持ち込む公算が大きい。

明け4歳世代からも魅力的な好素材がエントリーしている。ショウナンラグーン(牡4・大久保洋吉)は、昨年5月のダービートライアル・青葉賞で鮮やかな差し切り勝ち。重賞初制覇を飾った。本番の日本ダービーでは6着に敗れたものの、出走メンバー中最速の上がり3ハロン33秒9(推定)をマーク。秋には、クラシック三冠最終戦となった前々走の菊花賞でも後方待機から最後の直線で追い込んで5着に入っているように、末脚の威力は現4歳世代の中においてもトップクラスと言える。2015年の初戦となった前走のオープン特別・万葉S(京都・芝3000m)は4着と、1番人気の期待に応えられなかったが、1着馬ステラウインドとは僅かに0秒1差。今回、持ち前の末脚を活かせる展開になれば、勝機は十分にあるはずだ。

クリールカイザー(牡6・相沢郁)は、まだ重賞のタイトルは獲得していないものの、昨年の秋シーズンは、産経賞オールカマー(新潟・芝2200mで開催)3着→アルゼンチン共和国杯2着→ステイヤーズS3着と、GII で安定感のある走りを続けた。この中間は短期放牧でリフレッシュ。今回は中6週のローテーションでの出走になるが、15日に美浦南Wコースで行われた1週前追い切りでは迫力満点の動きを披露。さらに調子を上げている印象があり、強敵が相手となる今回も上位争いに加わってくるだろう。

パッションダンス(牡7・友道康夫)は、2012年に、500万下(新潟・芝2400m)→1000万下の再度山特別→1600万下のサンタクロースH(ともに阪神・芝2000m)と3連勝をマークして条件クラスを卒業。翌2013年には、オープンクラス昇級後3戦目となる新潟大賞典で重賞初制覇を飾った。続く鳴尾記念6着後から約1年半の長期休養を余儀なくされたが、復帰2戦目となった前走の中山金杯で17頭立ての15番人気という低評価を覆して4着に善戦。復調をアピールした。2006年の桜花賞2着馬アドマイヤキッス(父サンデーサイレンス)の半弟にあたる良血のディープインパクト産駒。休養期間が長かったためにキャリアもまだ12戦と浅い。7歳でもこれからが充実期というムードが漂っている。

ミトラ(せん7・萩原清)は、初勝利から3勝目までをダート1200mの距離で挙げたが、その後に芝へとシフト。2012年は1600万下のフリーウェイS(東京・芝1400m)と紅葉S(東京・芝1600m)を優勝。さらに、2013年のオープン特別・ニューイヤーS(中山・芝1600m)、2014年のオープン特別・パラダイスS(東京・芝1400m)と、芝1400~1600mの距離で勝利を積み上げた。重賞では善戦止まりのレースが続いたが、初めて芝2000mの距離を使われた前走の福島記念で好位から鋭く抜け出して先頭ゴールイン。デビュー20戦目で初の重賞タイトルを手に入れた。今回は相手関係が格段に強化されるうえに、距離もさらに200m延長となる。克服すべき課題も多いが、未知の魅力にあふれた一頭と言えよう。

マイネルフロスト(牡4・高木登)は、2歳時にメイクデビュー東京(芝1800m)→オープン特別のコスモス賞(函館・芝1800m)とデビュー2連勝を飾り、才能の片りんを見せた。その後は重賞を3戦して勝ち鞍を挙げられなかったが、3歳3月に毎日杯で重賞初制覇。青葉賞6着を経て出走した競馬の祭典・日本ダービーでは3着に好走した。秋シーズンはセントライト記念(新潟・芝2200mで開催)9着、菊花賞7着と好結果を残すことができず、2015年の始動戦となった前走の中山金杯も6着に敗れたが、日本ダービーで見せた底力は現4歳世代の中でもトップクラス。休養明け2戦目で体調面の上積みが見込める今回、軽視は禁物だろう。

ディサイファ(牡6・小島太)は、4歳時の2013年10月に1600万下・甲斐路S(東京・芝1800m)を制してオープンクラス入りを果たした。その後は重賞やオープン特別で惜敗が続いたが、昨年6月のエプソムCで待望の初重賞制覇を達成した。秋シーズンは、始動戦の毎日王冠4着の後、GI に挑戦。前々走の天皇賞(秋)が12着、前走のジャパンカップは15着といずれも完敗だったが、強敵相手にもまれた経験は今後活きてくるはずだ。前走後は放牧には出されず厩舎で調整。約2か月ぶりの実戦でも抜群の好気配を見せており、GII に戻る今回はその実力を見直す必要がある。

ダークシャドウ(牡8・堀宣行)は、2011年にエプソムCと毎日王冠を連勝し、勢いに乗って臨んだ天皇賞(秋)でも2着に好走。翌2012年にも天皇賞(秋)とジャパンカップで連続4着に善戦しており、今回のメンバーの中でも上位にランクされる実績の持ち主だ。3年以上も勝利から遠ざかっており、今年で8歳と年齢的にもベテランの域に入っているが、前走の金鯱賞では、スタートで出遅れたものの、長くいい脚を使って1着馬ラストインパクトから0秒6差の6着。10着に敗れた前々走の天皇賞(秋)も、1着馬スピルバーグとは0秒5差と着順ほど大きくは負けていない。衰えたと判断するのは早計だろう。