春のダート王へ注目の前哨戦 「第32回 東海テレビ杯 東海ステークス」

前身となったウインターS時代を含め、東海Sは、中京競馬場の名物レースとして長く親しまれている。2010年から2012年の3回は中京競馬場のスタンド改築および馬場改造工事に伴い5月の京都競馬場でダート1900mを舞台に行われたが、2013年からは再び中京競馬場に戻ったうえで、時期が1月に、距離がダート1800mにそれぞれ変更され、GI・フェブラリーSの重要な前哨戦として開催されている。2013年の優勝馬グレープブランデーは次走でフェブラリーSを制し、両レースの密接な関係を証明。さらに、2014年からは本レースの1着馬にフェブラリーSの優先出走権が与えられるようになった。また、本レースと同じ中京・ダート1800mの舞台では、2014年からチャンピオンズCが暮れのダート王決定戦として行われている。東海Sは、今年のダートGI 路線を展望するうえで見逃せない一戦と言えるだろう。寒風を吹き飛ばすダート巧者たちの熱戦に注目したい。
コパノリッキー(牡5・村山明)は、昨年のフェブラリーSを制してGI 初制覇を飾ると、続くJpnI・かしわ記念(船橋・ダート1600m)を連勝。さらに、秋にはJpnI・JBCクラシック(盛岡・ダート2000m)も快勝し、大きな飛躍を遂げた。JRA・GI 2勝目を目指した前々走のチャンピオンズCは、1番人気に支持されたものの、スタートで出遅れて逃げの形に持ち込めず12着に大敗したが、前走のGI・東京大賞典(大井・ダート2000m)では、先手を奪う本来のパターンから最後の直線でもよく粘って2着を確保。ダートにおける実力は現役でもトップクラスの存在だ。この中間の調教では、疲れも見せず栗東坂路とCWコースを併用して力強い脚さばきを披露。引き続き好調を維持しているだけに、今回ダート重賞5勝目をマークしてフェブラリーS連覇に向けて弾みをつけたいところだ。
ナムラビクター(牡6・福島信晴)は、前走のチャンピオンズCで強豪を相手に2着と好走し、今後の活躍が大いに期待される存在だ。前走では陣営が熱望していた内側の偶数枠(16頭立ての2枠4番)をゲット。互角のスタートから素早く好位につけて絶好の手応えで追走し、最後の直線で満を持して追い出されると、ゴール前では鋭く伸びて連対を確保した。勝ち馬のホッコータルマエが次走のGI・東京大賞典を連勝し2014年のJRA賞最優秀ダートホースに選出されたことを考えれば、1/2馬身差まで迫った本馬の能力は高く評価できる。5歳時の昨年、7戦してすべてのレースで掲示板(5着以内)を確保した安定感も立派。前走後も栗東坂路で入念な乗り込みを重ねており、引き続き状態の良さも目を引くだけに、昨年のアンタレスSに続く2度目の重賞制覇も難しくないはずだ。
昨年の東海Sの優勝馬ニホンピロアワーズ(牡8・大橋勇樹)が連覇を狙って登場する。単勝オッズ1.6倍という圧倒的1番人気の支持を受けて出走した昨年の本レースでは、好位を絶好の手応えで追走。最後の直線で軽く仕掛けられるとシャープな反応を示し、グランドシチー(2着)に2馬身差をつけてゴールインした。この時が初の中京コース参戦で、それまで経験の少なかった左回りコースでの快勝劇だった。昨年の下半期は3戦して勝ち鞍を挙げることはできなかったが、前走のJpnII・名古屋グランプリ(名古屋・ダート2500m)では勝ち馬のエーシンモアオバーとクビ差の2着に好走。まだまだ力の衰えがないことを証明している。明け8歳を迎えたものの、馬体は若々しく、優勝争いできる力量は十分にあるだろう。
インカンテーション(牡5・羽月友彦)は、3歳時の一昨年8月にレパードSを制し、早い段階から豊かな才能を見せていたが、完全本格化を遂げたのは4歳時の昨年夏以降だ。約8か月の長期休養明けで迎えたエルムSで3着に好走すると、BSN賞→ラジオ日本賞(ともにオープン特別、新潟・ダート1800m)→みやこSと破竹の3連勝を記録。そのレースぶりも、先行からの抜け出しあり、中団からの差し切りありと自在性を示す好内容だった。4番人気で出走した前走のチャンピオンズCは、外枠(16頭立ての8枠15番)からのスタートで、終始馬場の外めを回る形になり、レースの流れに乗れないまま10着に敗退。今回は巻き返しを期すレースだ。これまで、左回りのダートコースでは8戦5勝をマーク。今回の舞台となる中京・ダート1800mでも2勝を挙げており、条件は絶好と判断していいだろう。スムーズなレースができれば、3度目の重賞Vも見えてくる。
ランウェイワルツ(牡4・音無秀孝)は、昨夏のレパードSで3着に好走して以降、6戦連続で3着以内の成績を残している。その中に1着はなく勝ち味に遅い印象があるが、安定感は抜群だ。前走のオープン特別・ポルックスS(中山・ダート1800m)は、勝ち馬のイッシンドウタイから1馬身1/4差の2着。最後の直線では身上とする力強い末脚を繰り出して連対を確保しており、内容としては濃かった。今回、中京競馬場には初参戦となるが、ここまで地方競馬(門別、園田)を含め7か所の競馬場で連対をマークしているように適応能力は高く、左回りコースも東京と新潟で経験済み。念願の重賞初制覇を達成できるか、注目したい。
ソロル(牡5・中竹和也)は、2003年のフェブラリーSなどGI 4勝を挙げたゴールドアリュールを伯父に持つ良血馬。昨年のマーチSで重賞初制覇を飾り、平安Sでは勝ち馬のクリノスターオーから1/2馬身差の2着に好走。本格化を示した。ただし、まだ安定感に欠けるようで、夏以降はエルムS(7着)、シリウスS(10着)、みやこS(9着)と好結果を残せず、この中間は放牧でひと息入れたうえでの出走となる。これまでの全6勝中5勝をダート1800mの距離で記録。中京・ダートコース自体は初参戦だが、力を発揮できる舞台と見ていいだろう。マーチS(重馬場)を勝った時のように脚抜きの良い馬場コンディションになれば、重賞2勝目のチャンスも見出せるはずだ。
グランドシチー(牡8・相沢郁)は、過去2年の東海Sで5着、2着という成績を残し、今年で3年連続の出走となる古豪。道中じっくりと脚をためて最後の直線で末脚を活かすタイプだけに、レース展開に左右される面はあるが、これまで強い相手と数多く戦ってきた経験は大きな財産だ。明け8歳を迎えたベテランホースだが、ここ3戦もシリウスS6着→JpnII・浦和記念(浦和・ダート2000m)5着→オープン特別の師走S(中山・ダート1800m)4着と、大きな衰えはなく気力充実の走りを見せている。鋭く追い込んで2着に好走した昨年の東海Sと同様の末脚を今回も発揮できれば、上位進出が期待できる。
マイネルクロップ(牡5・飯田雄三)は、今年初戦となった前走の1600万下・初夢S(京都・ダート1800m)で2着馬に3馬身差をつける快勝劇を演じ、オープンクラス復帰を果たした。中団のインで脚をため、最後の直線に向いてから馬場の外めに出して追い出されるとシャープな反応を示し、一気に差し切る強い内容で優勝。それまでは詰めの甘さを見せていたが、このレースで完全に払拭し、ひと回り成長した印象を残している。今回は、3歳時の2013年弥生賞(8着)以来となる重賞エントリー。相手は大幅に強化されるが、今は勢いがあるうえに、相手なりに走れる堅実性も備えている。全5勝中4勝をダート1800mで挙げているように距離も最適。上位進出があっても不思議ではない。
マイネルバイカ(牡6・白井寿昭)は、昨年、1600万下の初夢S(京都・ダート1800m)を勝ち上がり、オープンクラスに復帰してすぐの挑戦となった東海Sで勝ち馬のニホンピロアワーズから0秒7差の3着に好走。中団追走から最後の直線で前があくと目を引く末脚を披露した。その後は少し精彩を欠くレースもあったが、3走前のオープン特別・ブラジルC(東京・ダート2100m)では、2番手追走から直線で抜け出し、2着馬のランウェイワルツに1馬身1/4差をつけて優勝。通算6勝目を挙げている。今回は〔1・0・1・1〕と良績のある中京・ダートコースが舞台のうえに、1800mの距離も〔3・1・2・3〕と好相性。伏兵でも注意は怠れない。